限りあるから美しい


フェンスに持たれかかると、肩の重荷はゆっくりと離れていくようだった。

時間に追われるとはよく言うが、私は時間を追いかけることに疲れてしまった。どんなに頑張ってもその流れには追いつけないで、泣きを見るのは、いつも私。

「よっ、受験生。いくらなんでも最近ここに居過ぎじゃないのか?」

1人の時間を邪魔されるのは嫌いだけれど、最近はそうも思わない。
「ここにいられるのも、あと少しだから」

呟くように答えて、外を見下ろす。ゆっくりと私の隣にやってきたその横顔はあまりに美しくて、目を逸らした。
「……私ちょっと前まであんたのこと邪魔だと思ってた」
「俺も」

少しの言葉を交わしては訪れる沈黙。

「ずっと続けば良いのに」
「……そうだな」

その声を胸に焼き付ける。それだけで十分だった。今はただ、この時があればいい。追いかけずともここで待つ、この時が。